最低賃金改定、社労士の先回り術
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最低賃金改定は「正式決定を待つ前」から準備できる
毎年、秋の最低賃金改定が近づくと、顧問先から次のような相談が増えてきます。
「今年はいくらくらい上がりそうですか?」
「うちの従業員で、給与を見直す必要がある人はいますか?」
「賃上げすると、会社の負担はどのくらい増えますか?」
都道府県ごとの最低賃金額や発効日は、地方最低賃金審議会での審議などを経て順次決定されます。しかし、正式決定を待たなければ何もできないわけではありません。
中央最低賃金審議会から示された目安額を使えば、「改定後に最低賃金を下回る可能性がある従業員は誰か」「給与をどの程度見直す必要がありそうか」といった事前シミュレーションを始められます。
最低賃金への対応は、単に給与計算の設定を変更するだけではありません。対象者の確認、賃上げ後の人件費試算、就業規則や雇用契約書の見直し、助成金の検討など、事前に確認しておきたいことが多くあります。
顧問先にとって悩ましいのは、「最低賃金が上がる」という事実そのものよりも、自社では誰が影響を受け、いくら給与を引き上げる必要があり、その結果として会社負担がどの程度増えるのかが分からないことです。
だからこそ、目安が示された段階から影響を数字で整理し、具体的な選択肢を示すことが、顧問先への価値ある「先回り提案」につながります。
決定後に動き始めると、なぜ対応が遅れるのか
地域別最低賃金の正式な決定後、発効までの期間には限りがあります。発効日は都道府県によって異なるため、各地域の公表内容を確認しながら準備を進める必要があります。
正式決定後に初めて対象者を調べ始めると、短期間に次の対応が集中します。
- 時給者・日給者・月給者の最低賃金チェック
- 対象となる手当、対象外となる手当の確認
- 賃上げ後の人件費や社会保険料等の試算
- 就業規則・賃金規程の変更
- 労働条件通知書や雇用契約書の見直し
- 給与計算ソフトのマスター変更
- 活用できる助成金の確認
特に見落としやすいのが月給者です。月給額だけを見ると問題がないように見えても、最低賃金の対象となる賃金を月平均所定労働時間で割って時間額へ換算すると、改定後の最低賃金を下回る場合があります。
また、賃金を引き上げることで、最低賃金付近の従業員同士の賃金差が小さくなったり、経験年数や役割に応じた賃金バランスが崩れたりする可能性もあります。対象者だけを機械的に引き上げるのではなく、周辺の従業員を含めた賃金設計も確認しておきたいところです。
今から進めたい4つの先回り対応
影響を受けそうな従業員を抽出する
まずは、現在の給与データをもとに、目安額を下回る可能性がある従業員を顧問先ごとに確認します。
時給者だけでなく、日給者・月給者も時間額へ換算して確認することが重要です。皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外割増賃金など、最低賃金の計算に算入しない賃金もあるため、基本給だけで判断せず、賃金項目の内容まで確認しましょう。
まず全従業員の時間額と所定労働時間を一覧で把握し、その中から影響を受けそうな従業員を絞り込むと、確認漏れを防ぎやすくなります。この段階では、目安額を使った「対象者候補の抽出」で構いません。正式な最低賃金額が決まったあとに再確認できるよう、対象者と計算根拠を一覧にしておくとスムーズです。
賃上げ後の会社負担を試算する
顧問先が知りたいのは、「誰の給与を変える必要があるか」だけではありません。
- 一人あたり、月額でいくら上げる必要があるのか
- 会社全体の給与総額はいくら増えるのか
- 社会保険料・労働保険料を含めると、負担はいくらになるのか
ここまで数字で示すことで、顧問先は予算の確保や価格転嫁、人員配置の見直しなどを早めに検討できます。
「法改正に対応してください」と伝えるだけでなく、「この給与額まで引き上げると、会社負担はこの程度増える見込みです」と示せれば、顧問先は具体的な経営判断へ進みやすくなります。
業務改善助成金の対象になりそうか確認する
最低賃金付近の従業員がいる顧問先には、業務改善助成金を活用できないか確認します。
業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引き上げと、生産性向上につながる設備投資等を組み合わせた支援制度です。単に賃上げをすれば受給できる制度ではなく、対象要件、申請時期、設備投資の内容などを確認する必要があります。
賃上げや設備の導入を先に進めると対象にならない場合があるため、「使えるかもしれない顧問先」を早めに見つけることが重要です。
発効日までのスケジュールを共有する
顧問先には、次のような流れを示しておくと、社内調整を進めてもらいやすくなります。
- 目安額による対象者の仮抽出
- 賃上げ額と会社負担の試算
- 助成金の対象要件・設備投資計画の確認
- 都道府県ごとの正式な最低賃金額と発効日の確認
- 賃上げ額の決定と規程・契約書の見直し
- 給与計算ソフトの設定変更
- 改定後の給与計算結果の確認
「いつまでに、誰が、何を決めるか」を見える化することで、発効直前の混乱や変更漏れを防ぎやすくなります。
セルズのツールで「把握・確認・提案」を効率化
最低賃金改定への対応を、すべて手作業で進める必要はありません。セルズの各製品を活用すると、給与データをもとにした対象者の把握から、賃上げ後の会社負担の試算、顧問先への提案資料作成まで効率化できます。
| 製品 | 活用場面 |
|---|---|
| FORROU | 日常の給与データから、確認が必要な従業員に気づく |
| Cells給与 | 登録されている給与データをもとに最低賃金を確認する |
| 最適給与クラウド | 都道府県別の最低賃金判定から、必要な賃上げ額・会社負担の試算、顧問先への提案まで行う |
FORROU | ダッシュボードで確認が必要な従業員に気づく
FORROUでは、「事業所ダッシュボード」のフォローリストに、雇用条件の確認を推奨する従業員が表示されます。
過去3か月分の確定済み給与データについて、基本給支給額の時給単価が基準額を下回る場合、「最賃」欄にチェックが表示されます。日頃の給与計算データから、確認が必要な従業員へ早めに気づくための入口として活用できます。
(ただし、フォローリストはあくまで参考情報です。2026年8月時点では2025年度の全国加重平均額1,118円を基準としており、都道府県別最低賃金による正式な適否判定ではありません。また、対象者や算出方法にも条件があります。チェックが付いた従業員だけでなく、各都道府県の改定額や最低賃金の算入対象となる手当などを踏まえて、個別に確認してください。)
Cells給与 | 給与データから対象者を確認する
Cells給与の「最低賃金」機能では、登録されている給与データをもとに、最低賃金を下回る可能性がある従業員を確認できます。
時給者だけでなく、日給者・月給者についても時間額へ換算して確認できるため、手計算による確認負担や見落としの軽減に役立ちます。
(最低賃金額の設定、対象となる手当、所定労働時間などが判定結果に影響するため、事前に登録内容を確認したうえでご利用ください。)
最適給与クラウド | 必要な賃上げ額と会社負担まで試算する
最低賃金改定について顧問先へ案内するとき、単に「最低賃金が上がります」と伝えるだけでは、経営者は自社への具体的な影響を判断できません。
最適給与クラウドの「最低賃金チェッカー」では、都道府県と年度、所定内給与、所定内労働時間などを設定すると、その従業員の給与が地域別最低賃金を満たしているか判定できます。時給者だけでなく、月給者も時間額へ換算して確認できるため、月給額だけでは気づきにくい対象者の把握にも役立ちます。
一人ずつ入力して確認するだけでなく、CSVデータを取り込んで複数人をまとめて判定することも可能です。全従業員を一覧で確認し、最低賃金改定の影響を受ける可能性がある従業員を効率よく絞り込めます。
最低賃金を下回る場合は、最低賃金を満たすために必要な月額給与を確認できます。さらに「最低賃金と会社費用負担分」機能を使うと、その給与額まで引き上げた場合に増加する社会保険料・労働保険料などを含め、会社負担額を試算できます。
結果はCSV・PDF形式で出力できるため、顧問先との打ち合わせ資料としても活用できます。
活用の流れは、次のように整理できます。
- 全従業員について、地域別最低賃金を満たしているか確認する
- 影響を受ける従業員と、最低賃金を満たすために必要な給与額を把握する
- 賃上げ後に増える会社負担を試算する
- 結果を資料として出力し、顧問先へ具体的な対応案を示す
最適給与クラウドの価値は、最低賃金の「適否判定」だけではありません。「誰が対象になるのか」「いくら上げる必要があるのか」「会社の負担はいくら増えるのか」を一連の数字で示し、顧問先が改定方針を決められる状態にすることにあります。
社労士にとっても、最低賃金を守るよう伝えるだけでなく、顧問先が適切な賃金を支払える体制づくりを支援する、提案型のコンサルティングにつなげやすくなります。
賃上げとあわせて確認したい「業務改善助成金」
最低賃金の引き上げによって賃金改定が必要になる顧問先には、「業務改善助成金」を活用できないか確認しておきましょう。
業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引き上げと、生産性向上につながる設備投資等を行った中小企業・小規模事業者に対して、設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。
令和8年度は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げることなどが要件とされています。単なる賃上げ費用が助成される制度ではなく、賃上げとあわせて、生産性向上につながる設備・システムの導入などを計画する必要があります。
また、設備の導入は原則として交付決定後に行う必要があります。賃上げや設備導入を先に進めると対象にならない可能性があるため、利用を検討する場合は早めの確認が重要です。
最低賃金の対象者と必要な賃上げ額を把握したうえで、「業務改善助成金を活用できないか」まで案内できれば、顧問先にとってより具体的な提案になります。
※対象要件や申請期間などは変更される場合があります。
申請の際は、必ず厚生労働省の最新情報をご確認ください。
最低賃金対応を、顧問先との信頼を深める機会に
最低賃金の引き上げは、顧問先にとって人件費の増加を伴う重要な経営課題です。
そんなときに、社労士から次のような提案があれば、経営者の安心感は大きく変わります。
大切なのは、正式決定後に給与計算を変更するだけでなく、対象者を早めに把握し、必要な賃上げ額、会社負担、助成金などの選択肢を具体的な数字で示すことです。
社労士の役割は、法令の内容を伝えることだけにとどまりません。顧問先が最低賃金に対応できるよう、現状を可視化し、実行可能な賃金改定へ伴走することも重要な支援の一つです。
セルズのツールも活用しながら、最低賃金改定への対応を、顧問先との信頼を深める提案機会につなげてみてはいかがでしょうか。
最低賃金チェックや賃上げ提案を、もっとスムーズに
セルズでは、社労士事務所の給与計算業務と、顧問先への提案業務を支援する各種サービスを提供しています。
といったお悩みに合わせて、ぜひ各製品をご活用ください。
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