「マイナポータル申請」と「e-Gov申請」徹底比較!!(2021年5月現在)

2020年4月から始まった、特定法人に対する社会保険・労働保険の一部電子申請の義務化。※1
2021年2月現在「マイナポータル」または電子政府の総合窓口「e-Gov(イーガブ)」の2種類を通じた電子申請が可能です。
※1…特定法人及び義務化された電子申請手続についてはこちら

社労士や人事労務担当者の業務に大きく係る2つのプラットフォームの違いを徹底解説いたします!
私たち人事労務の実務に携わる人間にとって大きく影響する部分から紹介していきましょう。

◆ 2021年5月時点での電子申請可能な手続き一覧

図を見て分かる通り、現状の「マイナポータル申請」は人事労務実務にとって必須である
「労働保険年度更新」をはじめ、各種成立届など適用事業所関係や、使用頻度の高い
雇用継続給付などに対応しておらず
実務に用いる業務システムとしては不十分と言わざるを得ません。

◆ 2021年5月時点での電子申請可能な手続き一覧
※「マイナポータル申請」の電子申請可能な手続きについては右記より抜粋 社会保険/雇用保険
※「e-Gov申請」の電子申請可能な手続きについては右記より抜粋 社会保険/雇用保険/労働保険
※健康保険組合の電子申請可能な手続きは右記より抜粋 全国社会保険労務士連合会. 「2020年11月 電子申請がスタートします」 , (参照 2020-11-02)

2020年4月から運用が開始された「マイナポータル」では、電子申請が義務化された手続きへの対応からスタートしており、
「e-Gov」では対応可能な手続きにおいても「マイナポータル」では未対応な部分が大きく残ります。

そのため、「マイナポータル」を利用した申請方式のシステムを選んで業務を進めた場合には、
未対応の手続きについては別途「e-Gov申請」での対応や紙での申請を余儀なくされ、
手続関連業務を複数のシステムで管理することにより、手続き漏れ等のミスが起こりやすくなります。

なぜ「マイナポータル申請」が労働保険年度更新等の手続きに対応しないかというと、
2つのプラットフォームの基本概念には根本的な違いがあるためです。

  • 「マイナポータル申請」=マイナンバーを基軸とした各種届出の効率化を狙ったもの
  • 「e-Gov申請」=社会保険関連手続きを中心とした届出業務に最適化する


上記のようにあくまでも「マイナポータル」はマイナンバーを利用して
個人としての利便性を高める仕組みであり、企業が利用することに重きをおいて仕組みが作られていません。

企業の申請については「e-Gov申請」が最適化されておりますので、
現状社労士や人事労務担当者が手続きに関する実務をおこなう上では、
「e-Gov申請」を利用しているシステムを利用するのがよいでしょう。

また、電子申請可能な対象手続き数の差以外にも、
現状「マイナポータル申請」よりも「e-Gov申請」が優位な点がいくつかあります。

この記事では、「マイナポータル申請」と「e-Gov申請」の違いを4つのポイントに注目して解説していきます。

「マイナポータル申請」と「e-Gov申請」とは

「マイナポータル申請」と「e-Gov申請」の詳細を比較する前に、それぞれの概要を簡単に解説いたします。

「マイナポータル申請」とは

「マイナポータル申請」は、2020年4月から始まり、「GビズID」認証を利用することで
健康保険、厚生年金、雇用保険の主要な手続きにおいて、電子申請が可能な申請方式です。

「GビズID」とは、1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる認証システムのことです。
その「GビズID」を利用することで電子証明書を利用せずに電子申請をおこなうことができます。

「e-Gov」とは

「e-Gov」(イーガブ「電子政府の総合窓口」)とは、政府が運営する行政情報のポータルサイトです。
健康保険、厚生年金、雇用保険、労働保険年度更新申告などの手続きにおいて、
インターネット経由で申請することが可能です。

2020年11月からは「e-Gov」のアップデートが予定されており、
「GビズID」を利用した手続きや電子申請後の管理等も改善されるようです。

※【2020年11月5日追記】
「e-Gov」のアップデート後は「GビズID」での申請が可能となりますが、
手続きの際にはセキュリティを担保するため、ワンタイムパスワードによる2段階認証が必要となります。

ワンタイムパスワードでのログイン後暫くはログイン状態が持続するようですが、数時間経つと再度の認証が求められます。
一日に何度も手続きをする社会保険労務士の場合は複数回認証の手間が掛かるため、既存の電子証明書を利用した運用が望ましいでしょう。

※【2021年5月28日追記】
現在、「e-Gov」では全ての手続きを「GビズID」で申請することはできません。
「GビズID」に対応していない手続きは、従来通り電子証明書を利用して申請します。

5月下旬に社労士連合会を通して発表があり、「e-Gov」で申請する年度更新を含む労働保険関係手続きが「GビズID」に対応しました。
今後も「GビズID」に対応する手続きは増えていくことが予想されます。
しかし、まだ対応していない手続きもございます。(例:「雇用保険事業所設置届」など)

新たに「GビズID」対応となった手続きは以下でご確認いただけます。
労働保険の適用・徴収に関して電子申請で届出できる項目一覧(出典:厚生労働省ホームページ)

2020年11月のe-Govアップデートの概要に関しては、こちらをご確認ください。

4つのポイントから見る「マイナポータル申請」と「e-Gov申請」の違い

ポイント1 対象手続きの違い

マイナポータル
下記のサイトに「マイナポータル」の対象手続案一覧が掲載されています。
【オンライン・ワンストップ化の対象手続案一覧】

「マイナポータル」は、主に個人のライフイベントを中心とした手続きに対応を予定して、現在開発が進められています。

しかし、現状公表されている資料においては未だ構想段階ではありますが、
「労働保険年度更新」手続きが対応予定には含まれておりません。

e-Gov
次に「e-Gov申請」の対象手続き一覧です。
【e-Gov申請対象手続一覧】
これらは一例であり、就業規則、36協定、産前産後休業取得者申出書など、
さらに様々な手続きの電子申請が可能です。

「マイナポータル申請」では、現在数十種類の対象手続きに対応を予定しているのに対して
「e-Gov申請」では100種類を超える手続きに対応しています。

申請業務をおこなう方々にとってこの差は大きいでしょう。

ポイント2 電子証明書の違い

マイナポータル
「マイナポータル申請」では、「GビズID」認証を利用することによって、
電子証明書不要で電子申請が可能です。

e-Gov
現在は電子証明書のみの申請ですが、2020年11月の「e-Gov」更改により「GビズID」認証にも対応予定です。
ただし、いくつかの手続きについては電子証明書が必要となるようですので、
「e-Gov申請」の場合には、電子証明書の取得は必須となりそうです。

ポイント3 操作画面の方法

マイナポータル
「マイナポータル」は業務システムを利用したAPI電子申請のみのため、
「マイナポータル本体」には、申請用の操作画面は存在しません。
そのため、「マイナポータル」に対応した業務システムを導入する必要があります。

e-Gov
「e-Gov申請」では各種申請用の画面が存在しています。
また、業務効率化のため弊社「台帳」を始めとする届出業務システムも多く提供されています。
届出業務システムが未対応の申請手続に関しても、
「e-Gov」本体の操作画面から従来の届出様式に準じた方法で電子申請が可能です。

ポイント4 運用方針の違い

マイナポータル
「マイナポータル」を通じた申請は、運用開始から半年しか経っていないため、
今後の法改正や「マイナポータル申請」に関連する各システムの改修時においての
情報共有等に対する運用体制が未だに発表されておりません。
そのため、不具合等が発生したときの問い合わせ先が設置されておらず、
対応に時間がかかる可能性があります。

e-Gov
「e-Gov」では法改正等で電子申請の様式や運用ルール等が変更される場合、
ベンダー各社は社会保険システム連絡協議会を通して最新情報を把握し、バージョンアップの準備を行っています。

社会保険システム連絡協議会では厚生労働省に対して、法改正における疑問点の確認や
人事労務実務における業務改善のための意見や要望を提出しています。

「マイナポータル申請」と「e-Gov申請」は今後どうなっていくのか

今後マイナンバーを中心とした、個人情報管理がより推進されることが予想される一方で、
「e-Gov」は「マイナポータル」での申請体制が整うまで、当面は存続されると考えられます。

また、今後「マイナポータル」への個人情報関連手続きの集約が行われた場合においても、
「e-Gov」から「マイナポータル」への移行に際し、仕様の変更や移行猶予期間が設けられると予想されます。

現状の業務に適したシステムをご利用いただくことが最善と考えております。

まとめ

現状の「マイナポータル」を用いた電子申請のみでは、年間業務を通した人事労務業務を終えることができません。
また、現段階では運用体制やサポート面に関しても「e-Gov」の方が整備されていると言えます。

しかし、政府の一大施策であるマイナンバーを基軸とした諸施策の中心となる「マイナポータル」は、
近い将来、「e-Gov申請」と同様の手続きをおこなうことができるようになる可能性もあります。

現状における弊社の両システムに対する方針と致しましては、
社労士や人事労務担当者が行う届出系業務に対応している「e-Gov」との連携を優先しつつ、
2022年リリース予定の新システムにて、「マイナポータル」への対応を予定し、開発に勤しんでおります。

今後も情報を収集しながらユーザーの皆様が働きやすい環境を整える一端を担っていけるよう精進してまいります。
引き続き弊社を宜しくお願いいたします。

今回は「マイナポータル申請」と「e-Gov申請」の比較にて情報をお届けいたしましたが、
電子申請などを含む昨今の業務の電子化について、対応策や情報を求める社労士や
人事労務担当者の方々のお声を多く頂戴しております。

弊社では、本記事の内容を含めデジタル化のことが90分で習得できる勉強会を開催しています。
「デジタル化勉強会」へのお申込はこちら

また、弊社システム【労務管理統合システム「台帳」】では「e-Gov」プラットフォームを利用した電子申請が可能です。
「台帳導入説明会」では、実際に操作をしている様子を見ながら電子申請のやり方を体感できます。
「台帳導入説明会」へのお申込はこちら

※【2021年5月28日追記】
上記の「デジタル化勉強会」「台帳導入説明会」のお申込み受付は終了しています。
今後も業務の電子化や、弊社ソフトのご利用イメージについてご紹介する勉強会を開催してまいります。
ご興味のある方は、下記のページにてお申込みください。
「電子申請」や「業務ソフト」 を検討されている方向けの勉強会
「台帳」を利用した業務改善を行いたい方向けの勉強会

最後までお読みいただき、ありがとうございました。